お線香の包装の仕方には意味がある!

お線香

日本には結婚をするときにご先祖さまにお線香をお供えして、ご挨拶をする習慣がありました。そして近年ではお盆や喪中はがきのお返しにお線香を送ることが当たり前になっています。贈り物のお線香は感謝やお悔やみの気持ちを表したもの。お線香の包装にもさまざまな意味が込められているのです。包装の意味を知れば、贈るときにより気持ちを込めることができると同時に、受け取ったときのありがたみも増すはずです。この記事ではお線香の包装の仕方と、その意味について解説します。

どんなときにお線香を贈る?

お線香は、煙を通して亡くなった方と心を通い合わせるといった意味合いや、身を清めて心を落ちつけるといった効用が期待されますが、「香を贈る=幸を授ける」という意味で喜ばしい場合にも贈られます。そのため大きくは弔事用と慶事用に分かれますが、具体的には以下のようなシチュエーションが考えられます。

  • ご結婚前の結納時
  • ご結婚後のご挨拶の時
  • お通夜、ご葬儀の時
  • 初七日、四十九日、お盆、お彼岸などの法要の時
  • 三回忌、七回忌などの法要の時
  • 帰省の時
  • 訃報を知った時
  • 喪中はがきが届いた時

ここに挙げたように、法事を含むとはいえ弔慶に供されるものですから、時と場合に合わせて表現する気持ちを変えなくてはなりません。その表現手段のひとつが、これから解説する包装の仕方や表書きです。

包装紙を使ったお線香の正しい包み方とその意味

お線香の贈り物を包む際には、弔事と慶事で包み方が異なります。弔事の場合は、包装したときの「折返しの部分が下」に来るように包みましょう。これには不幸や悲しみが溜まってしまわないように、上から下へ流れていってほしいという願いが込められています。反対に、慶事の場合は包装したときの「折返しの部分が上」に来るように包みましょう。これは福や良いことを受け止めることを意味します。

水引の色や本数、結び方のちがい

水引とは、包装した贈り物の上にかける帯紐のことです。水引には「魔除け」の役割と「封切り前」の意味があるとされ、のし紙に直接印刷されている場合もあります。色は「黒白・黄白・金銀・紅白・銀一色」などさまざまで、形も「結び切り・蝶結び・あわじ結び」など複数ありますから迷ってしまう方も多いでしょう。用途が慶事か弔事かで、組み合わせを以下のように分けることができます。あわじ結びは結び切りの一種として、慶事・弔事どちらでも使用できます。

慶事の場合

紅白蝶結び(何度もあってよいお祝い事の場合)
紅白結び切り(一度きりであってほしいお祝い事の場合。)
金銀結び切り(一度きりであってほしいお祝い事で特に豪華にしたい場合や滅多にないお祝いごと。婚礼祝いや長寿祝い)

慶事の場合、水引の本数は5本や7本など「奇数」が原則。婚礼のみ10本の水引が使用されます。

弔事の場合

黒白の結び切り(弔事全般に使用、銀を使う場合もあります)
黄白の結び切り(主に関西で使用、特に京都で一般的)

弔事の場合、水引の本数は2本、4本、6本と「偶数」が原則です。

結び切りは一度きり、蝶結びは繰り返しあってよい場合に用いられます。特に注意が必要なのは慶事のときです。ご出産やご長寿祝いのように何度でも喜ばれる慶事の場合は「蝶結び」が正しいですが、ご結婚祝いのように一度きりで末永い幸福を願う場合は「結び切り」が適切です。この点を間違えると失礼にあたりますので気をつけましょう。 

のし紙の巻き方(慶事掛けと弔事掛け)

のし紙の巻き方にも、用途に合わせて「慶事掛け」と「弔事掛け」の2種類があります。慶事掛けは、包装したお線香の外箱を正位置から奥に向かって裏返して(奥が天、手前が地)、のし紙の「右端が上」になるように重ねて巻きます。弔事掛けは、のし紙の「左端が上」になるように重ねて巻きます。大切なのは天・地を間違えないことです。天・地を間違えた状態でのし紙を巻くと、意味合いが反対になってしまうので注意してください。

表書きには薄墨を使う

表書きの際の文字の色は、一般的に「薄墨」を使います。古来より文字を書くときには硯(すずり)で擦った墨が使われてきましたが、その際に涙がこぼれ落ちて墨汁が薄まったことから薄墨が好まれるようになったと言われています。昔の人はそのようにして哀悼の念を表してきたのです。また、急な出来事に驚き慌てて準備した、硯をきちんと擦る時間がなかったといった印象が醸し出されることも、薄墨が用いられるようになった理由の一端とされています。

ただし、四十九日の法要後に贈る場合には、地域やご家庭によって「濃墨」が適切と考えるケースもあります。仏さまへの感謝が念頭にある法事ですので、哀悼が目的ではないとも考えられるからです。迷ってしまう場合には販売店に相談した方がよいでしょう。

正しいマナーを知り、深い心を知る

お線香の包装の仕方や水引、表書きひとつとっても、古来の習慣やしきたりが現代に息づいていることがわかるのではないでしょうか。マナーのひとつひとつに繊細な心情が表現されているのです。正しい作法にのっとってお線香を贈るることで、これまでよりも深い気持ちを通い合わせてください。