位牌に梵字は必要なの?

お位牌

梵字とは、お寺さまから授かった白木位牌に書かれていることが多い、小さな記号のことを指します。

位牌は故人のためのオーダーメイド品。まずは、いろいろな種類のなかから好きなデザインや大きさを選びます。その後、戒名…生前の名前…亡くなった年齢…など内容についての項目を、ひとつずつ確認していきます。そのなかでも、「入れるべきかどうか」がわかりにくいのが梵字。

今回は、そもそも梵字とはなにか。自分の位牌には入れる必要があるのかどうかについて説明します。

そもそも梵字とは?

梵字の話は少し複雑です。

梵字とは、古代インドで使用されていたサンスクリット語(漢字文化圏では梵語と呼ぶ)を書き記すために用いられていたブラーフミー文字を指します。サンスクリット語は現在でも宗教や哲学の場面で使用されることの多い言語です。

奈良時代、中国を経由して伝来した梵字は、同時期にもたらされた仏教と結びつきます。その後、平安時代に入ると、空海や最澄が持ち帰った経典の研究が進み、次第に「梵字」という言葉は日本独自の意味合いを持つようになっていきます。

このような経緯をたどった結果、本来はブラーフミー文字を指すものだった梵字は、ブラーフミー文字の派生にあたる悉曇文字(しったん文字)のことを指し示すようになりました。

ブラーフミー文字は、インドで多数派を占めるヒンドゥー教の神様であるブラフマーが創造した文字という意味です。その影響から、位牌に用いる梵字も、1文字で仏さまを表す神聖な文字とされています。

※ この記事では本来は梵字と呼ばない「妙法」「法名」「空」についても便宜上、梵字として紹介します。

梵字を位牌に入れる必要はあるの?

位牌をつくる際、梵字を入れる必要はあるのでしょうか。実は一様に決まりがあるわけではありません。

判断する方法として下記の4つを参考にするとよいでしょう。

1 お仏壇に他のご先祖さまの位牌がある場合は、それらを参考にする

 お寺さまからいただく白木位牌を参考にする

 「浄土宗」と「真言宗」は入れる傾向がある

4 菩提寺がある場合は、お寺さまに相談する ポイント!

まずは1から確認しましょう。他のご先祖さまの位牌がない場合は、以降を参考にします。

梵字を位牌に入れるか入れないかはお寺さまによっても考えが異なります。菩提寺がある場合は事前に確認するとのが一番確実です。ポイント!

ちなみに、白木位牌の戒名の上に「新帰元」や「新円寂」といった文字が書かれていることも。これらは新しく仏になったということを意味する文字であり、梵字とは呼びません。新たにつくる位牌に入れる必要はないので気を付けてください。

各宗派の梵字について

ア(字)

天台宗 【読み方:ア】

密教において中心の仏である大日如来を表します。ただし、天台宗は仏教のさまざまな教えを包括しているため、お仏壇の本尊として安置されることの多い阿弥陀如来を表す梵字である「キリーク」を入れることもあります。

ア(字)

真言宗 【読み方:ア】

密教では宇宙そのものであると考えられている真言宗の本尊である大日如来を表します。

キリーク

浄土宗 【読み方:キリーク】

西方浄土の教主で、浄土宗の本尊でもある阿弥陀如来を表します。

くう

禅宗(曹洞宗 臨済宗) 【読み方:くう】

成仏したことを意味します。また、「空」は仏教思想においてとても重要だとされている教えのひとつでもあります。

みょうほう

日蓮宗 【読み方:みょうほう】

日蓮宗の本尊は曼荼羅です。そのため梵字は用いることはありません。法華経の正式名称である「妙法蓮華経」からとった2字「妙法」を入れます。

ほうみょう

浄土真宗 【読み方:ほうみょう】

浄土真宗では他の宗派と違い、受戒をしないため戒名を「法名」と言います。一般的には、位牌を用いず、法名軸や過去帳に記すことが多いため、梵字は使用しません。浄土真宗で位牌をつくる場合は、文字と位牌サイズのバランスを考えて入れるかどうかを決めるとよいでしょう。

カ(字)

こどもの位牌 【読み方:カ】

こどもの場合、地蔵菩薩を表す梵字「カ(字)」を入れることがあります。地蔵菩薩はこどもを救う菩薩とされています。

位牌以外でも梵字は使われてます

位牌以外でも、アクセサリーや小物にも梵字は用いられます。

例えば、十二支守り本尊というものがあります。

それぞれの干支を守るとされている仏さまを表す梵字がありますので、自分だけのお守りとしてこのようなものを持たれてもよいでしょう。

まとめ 位牌の梵字は故人の宗派を表します

現在、位牌に入れる梵字は「宗派の本尊や大切な教えを表す記号」のような役割を果たしています。

入れる入れないに、決まりごとはありませんが、「浄土宗」と「真言宗」は入れることが多い傾向があります。また、白木位牌や他のご先祖さまの位牌も参考にするとよいでしょう。入れるかどうかを悩んでしまう場合は、お世話になっているお寺さまに相談すると安心です。

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