「仏壇の扉っていつ閉めるのですか?」
お仏壇の購入を検討している方から頻繁にいただくこの質問。はじめて自分たちで用意するお仏壇。このような些細なことにも疑問や不安を感じますよね。
お仏壇は基本的に「ずっと開けたまま」で問題ありません。
しかしその一方で、扉を閉めるのに適した場面もあるのです。今回はそんなお仏壇の扉の開閉について解説します。
お仏壇にはなぜ扉がついているの?
お位牌や故人の写真などが飾られていて、ご先祖さまのための祭壇という印象を持っている方も多いお仏壇。そういった役割と同時に、お仏壇は仏さまを祀る「家庭のなかの小さなお寺」でもあります。その証として伝統的な金仏壇や唐木仏壇では、寺院の本堂をミニチュア化したような構造でつくられています。
寺院の本堂は「内陣」と「外陣」にわけられ、その場を仕切るための「障子」があります。そして、本堂と外部の境には「雨戸」があります。
<内陣・外陣とは>
内陣(ないじん) 本堂の中央奥に位置し、ご本尊や開祖が安置されている場所。一般の人は入ることができない寺院で最も重要な空間です。
外陣(げじん) 内陣の外側にあたり、一般の人々が礼拝をする場所です。
このように、小さなお寺であるお仏壇の扉には「仏さまのいる特別な場所と人々を区切る」という役割があるのです。
※家具調モダン仏壇の場合は、洋室のインテリアに合わせてデザインされているものが多いため、障子がないタイプもあります。障子がないタイプであっても、そのお仏壇が家族にとっての小さなお寺であることに変わりありません。
お仏壇の扉の開閉 3パターン
お仏壇は基本的に「ずっと開けたまま」で問題ありませんが、扉を開け閉めする際の代表的な3つのパターンを紹介します。どれも間違えではありませんので、みなさんの家庭に一番しっくりくるものを選んでください。
1 朝に扉をあけて、夕方に閉める
丁寧で伝統的なやり方です。仏教的な供養としては一番理想的だと考える方もいるでしょう。
朝、「今日も無事に暮らせるようお守りください」「いってきます」と扉を開けて仏前に祈り、夕方になれば「今日も穏やかに一日を終えることができました」と感謝して手を合わせて扉を閉めましょう。
2 いつも開けておく
お仏壇の扉が閉まっているところを見たことがないという方も多いはず。これも家庭のお仏壇の祀り方として一般的です。
いつも故人が見守ってくれているような安心感を持つことができるため、家族が亡くなって間もない方はいつも開けておくことが多いようです。
3 手を合わせるとき以外は閉めたまま
家具調モダン仏壇の購入者のなかには、手を合わせるときだけお仏壇の扉を開くという方もいます。
例えば、ペットを飼っている方が安全を考えて。ほかにも、扉を閉めた状態のほうが部屋の雰囲気に合うと考える方がこのやり方を取り入れています。実際、多くの家具調モダン仏壇では、扉を閉めたときの姿にもさまざまな意匠が凝らされています。
お仏壇の扉を閉めるタイミング
基本的にお仏壇の開け閉めに難しい決まりごとはなく、それぞれの家庭に合うやり方で問題ありません。その一方で、お仏壇の扉を閉めるほうが良いとされるタイミングもあります。
四十九日までの期間
家族が亡くなり、四十九日を迎えるまでは、お仏壇の扉を閉めることが多いです。その間、白木の仮祭壇で供養をします。ただし地域差がありますので、心配な場合はお寺さまに確認すると良いでしょう。
仏間やリビングなどお仏壇のある部屋を掃除するとき
仏教的な意味のほかにも、お仏壇の扉を閉めたほうが良いタイミングが掃除のときです。
お仏壇のなかには、ご本尊や位牌のほか、さまざまな仏具が入っています。一度ホコリが入るとせっかく部屋の掃除が終わったのに、次はお仏壇の掃除が必要になってしまうかもしれません。掃除をする前に扉を閉めて、部屋が綺麗になったら開けましょう。
こんなときはお仏壇の扉を開けておきましょう
それでは「こんなときはお仏壇の扉を開く」というタイミングはあるのでしょうか。次の場面では積極的にお仏壇の扉を開けると良いとされています。
法事のとき
当然ですが、法事の際はお仏壇の扉を開ける必要があります。
お寺さまが来られない場合でも、仏教やご先祖さまにとって大切なこの日はお仏壇の扉を開けるのにふさわしいタイミングといえます。
家族親戚が集まるとき
お仏壇は「家庭のなかのちいさなお寺」であるとともに、ご先祖さまと出会う場所でもあります。お盆や正月、また、入学式や、結婚式など、家族にとっておめでたい日にもお仏壇の扉を開けるとよいでしょう。
※お盆の期間に精霊棚を出す代わりにお仏壇を閉めるという習慣がある地域もあります。
最近では扉のないお仏壇も…
これまでお仏壇の扉がついていることを前提に解説しましたが、最近では「扉のない」家具調モダン仏壇もあります。
扉がない特徴を活かし、従来よりもインテリア性の高いデザインでつくられたこのタイプは「手元供養」や「パーソナル供養」のためのお仏壇として近年注目されています。
「小さなお寺」であり「故人と出会う場所」でもあるお仏壇。扉の開閉は自由に。
お仏壇の扉の向こう側にはいつでも仏さまがおられ、ご先祖さまにも出会うことができます。
その扉の開け閉めに決まりはありません。以前は「ずっと開けたまま」か「朝に開けて、夕方に閉める」という家庭が一般的でしたが、最近では住宅環境や宗教観の変化から、「手を合わせるときだけ開ける」という方も増えてきました。
閉めたほうが良いとされるのは「四十九日までの期間」と「部屋の掃除のとき」です。それ以外の場面では、ご自身の生活スタイルに馴染む方法を自由に取り入れると良いでしょう。