ご先祖さまが浄土から帰ってくるとされているお盆。せっかく帰ってこられるのだから、感謝の気持ちを込めて準備をしたいものです。
今回は、安心してご先祖さまをお迎えするために必要な「お盆に用意する盆飾り(仏具)」について解説します。
盆飾りはいつまでに用意したらよい?
全国的に「お盆休み」というと8月13日前後からはじまることが多いですが、仏教行事としてのお盆の期間には地域差があります。
東京都・神奈川県・静岡県・石川県など 7月13~16日(新盆)
それ以外の地域 8月13~16日(旧盆)
お盆の入りの前日、7月12日または8月12日までにはお盆飾りを終え、直前に生花やお供えものを用意します。余裕を持って当日を迎えるためには、7月または8月の初旬には手配を終えるようにしましょう。
盆飾りを用意する前に知っておきたい注意点
盆飾りとなる仏具を準備する際は次の2点に気を付けてください。
①盆飾りは季節ものが中心。直前になると品切れになることも
特に盆提灯の人気商品は品薄になることが多いので、早めにネットショップや実店舗で気に入ったものを探すことをおすすめします。
②家紋や家名入れなどの別注品は製作期間が2~3週間かかるので早めの準備が必要
盆提灯の家紋・家名入れ、初盆に向けてお位牌をつくる予定の方は製作期間を見越してスケジュールをたてましょう。
盆飾りとして用意する仏具の種類
ここでは、盆飾りとして用意する仏具を「お盆の時期だけ使うもの」と「お盆以外でも使うもの」にわけて説明します。
お盆の時期だけ使うもの
盆提灯
ご先祖さまが帰ってくる際の目印となります。無事に帰ってきてほしいという気持ちをのせて灯りをともしましょう。最近ではルームランプとしてお盆以外も使える、デザイン性の高いものも多くつくられています。
精霊馬(しょうりょううま)
ご先祖さまが浄土からこの世に帰ってくる際の乗り物として飾ります。早く帰ってきて欲しいから「馬」で駆けるようにお迎えに行き、お帰りのときはお土産をたくさん載せてゆっくりと帰路についてほしいから「牛」に乗ってもらって。そのために夏野菜やワラで馬と牛を形づくります。
最近ではインテリアグッズとしても飾りたくなる、おしゃれなタイプもあります。精霊馬「TOU」は使い捨てずに毎年飾ることができるから、家族と一緒に思い出を刻むことができます。
おがらと焙烙(ほうろく)
迎え火はご先祖さまが帰ってくるときの目印として、送り火は浄土に戻られるときのお見送りの意味合いがあります。実際に火をつけるので火の元には注意してください。
精霊棚(しょうりょうだな)盆棚(ぼんだな)
精霊棚と盆棚は読み方は違いますが、同じものを差します。都市部など大きな飾り棚が置けない場合は、天板が広いお飾り台があると便利です。お位牌や仏具、お供えものを飾ります。
精霊棚に飾るお供え
ここではお供えの一例を紹介します。無理のない範囲で用意をしてください。
まこも
お釈迦さまがまこもの敷物に病人を寝かせ、病を癒したとされていることから”神聖な植物”と言われています。その名残として、お盆の際にお供えの敷物として利用するようになりました。
水の子
ナスやキュウリ、カボチャなどの夏野菜を賽の目に切ってお米と合わせて、蓮の葉やお芋の葉の上に供えます。帰ってこられたご先祖さまやその他の霊魂に潤いのあるお供えをしたいという想いから準備されます。
稲、アワ、キビ、トウモロコシ等の穂
ご先祖さまや先人のおかげで豊作を迎えることができたと感謝を伝えるために用意します。
里芋などの農作物
ご先祖さまや先人のおかげで豊作を迎えることができたと感謝を伝えるために用意します。
ほおづき、ハマナスなどの赤い実
霊魂が道しるべとして持つための提灯の赤い明かりの代わりとされています。
そうめん・うどんなどの麺類
そのまま束となっている状態でお供えします。諸説ありますが、ご先祖さまが帰ってきた喜びが「細く長く」続くようにと縁起をかついでお供えします。また、お帰りの際の荷物をまとめる紐の役割としてなどとも言われています。
お団子
ご先祖さまをもてなすために用意されます。一般的にはなにも付けない白い団子をお供えしますが、地域や家庭によって特色があります。
蓮の葉
お供えものの器として用います。泥の中から美しい花を咲かせる蓮は、「清浄無比の花」として仏教の世界では尊ばれています。水の子や、果物、野菜などをのせて供えます。
盆花または仏花
厳しい自然のなかでも美しく咲く姿を、修行僧になぞらえて供えるようになりました。仏花の他に、地域によってはハスの実などを含んだ盆花を用意することもあります。ご自身で花を選ぶ場合は「とげのある花、毒を持つ花、香りの強い花」を避けます。
お盆以外でも使うもの
いままでに紹介した「お盆飾り」は、お盆にご先祖さまが帰ってくるのをお迎えし、感謝の気持ちを持ってもてなす意味があります。そ下記の仏具はご本尊である仏さまのために感謝を表すために用意します。
仏器や茶湯器、花立など日常的に使っている仏具もそのまま使用してください。
仏膳
仏さまに差し上げる仏膳。「ご飯」「汁物」「煮物」「和え物」「漬物」などを差し上げます。お箸は仏さまが食べやすいよう、お仏壇側に向けます。
高月または供物台
仏さまへのお供えものとなります。お餅や果物、お菓子などを差し上げます。
盆飾りはどのように飾る?
用意した仏具はどのように飾ればよいのでしょうか。ここでは基本的なお飾りの方法を紹介します。
下台のある仏壇の場合(精霊棚あり)
仏壇の手前に精霊棚を設置します。お位牌をお仏壇から出し、棚の中央に安置します。たくさんのお供えが仏具を飾ることができますが都市部や一部地域では精霊棚を用意しないこともあります。
下台のある仏壇の場合(精霊棚なし)
精霊棚を用意しない場合は、「お盆用お飾り台」や「経机」を使うこともあります。ただし、お盆の期間にお寺さまがこられる場合は、経机にお供えを置くのは避け、別の台を用意したほうがよいでしょう。
モダン型仏壇の場合(小型)
最近では、リビングや寝室に小さなお仏壇を置く方も増えてきました。そのような場合、従来のお盆飾りをすべて用意するのではなく、ご自身の生活に合わせた”シンプルスタイル”もよいでしょう。おしゃれな盆提灯とお菓子などのお供え、精霊馬だけ…など、思い思いに仏壇の周りのコーディネイトを楽しんでみてください。
「初盆」のときだけに必要なものは?
初盆は故人が亡くなってからはじめてこの世に帰ってくる特別なお盆。通常のお盆飾りとは別に「初盆ときだけに飾る提灯(白提灯)」が必要です。
白提灯
白提灯は、初めて浄土から帰ってくるご先祖さまが道に迷わないように、自宅の室内ではなく、玄関や軒先に飾ります。
ただし、最近の住宅事情によっては、部屋の窓際などの室内に置いていただいても問題ありません。柄のないシンプルな吊り下げ型を選びます。この白提灯は初盆が終わったら処分します。一般的な盆提灯は家族以外の方から送られることがありますが、白提灯は家族自ら用意します。その他は、通常のお盆と同じです。
初盆で使った盆提灯の処分方法についてはこちら ▼
ご先祖さまへの感謝の気持ちを込めて、盆飾りを準備しましょう。
いざお盆の準備をしようと思っても、何から用意したら良いか分からない方も多いのではないでしょうか。まず用意したいのが「盆提灯」。それ以外は、毎年少しずつ生活スタイルに合わせて揃えてもよいでしょう。
この機会にお盆用品一式の購入を考えている方は、手配に時間がかかるものもありますので早めに準備を開始することをおすすめします。
無理のない範囲で心をこめて、先祖さまのお帰りの支度をしてください。