お盆の時期に軒先や盆棚をやわらかく照らす盆提灯。
故人の霊が家に帰るときの目印になるだけでなく、初盆(新盆)を迎えるご遺族への慰めやねぎらいを表現する贈り物としても親しまれています。盆提灯は大切な人を亡くして心の休まらない日々を送っている家族への贈り物としても最適です。
この記事では盆提灯の正しい贈り方や種類などについて解説します。
贈り物としての盆提灯
贈り物としての盆提灯は「一対(2本セット)」が基本です。
しかし、贈り先のお住いの状況やご自身の予算に合わせて、1本だけ贈ったとしても失礼にはあたりません。ただし贈り先の間取りにあわせて大きさを調整するなどの配慮をしなければ、受け取ったものの飾る場所が無く、かえって気を遣わせてしまうということにもなりかねません。心配な場合は事前に連絡を取って、どのようなものを望んでいるかを確認した方がよいでしょう。
また、初盆にだけ飾られる「白提灯(白い無地の提灯)」は故人の家族が用意するケースが多いため、贈らないように気をつけなくてはなりません。白提灯は故人に対して1つあればよいとされていますので、通常の盆提灯のように複数飾られるものではありません。そのため、贈り物としては草花が描かれた盆提灯を選ぶ方が好ましいでしょう。絵柄入りの盆提灯であれば、白提灯とは違って初盆以降のお盆でも使用できます。
盆提灯を贈る時期
盆提灯を贈る時期は、お盆が行われる時期によって変わります。
東京を中心とした一部の地域では新盆(7月13日~16日)、他の大部分の地域では旧盆(8月13日~16日)にあわせて準備が進められますので、盆提灯を贈るときは時期を確認したうえで「お盆の月初め頃に届くように手配する」ことが原則です。もちろん、贈られる方としては、より早い時期に手元に届いた方が余裕を持ってお盆の用意ができるでしょう。
盆提灯の種類
近年の住宅事情の変化に合わせて、現在では盆提灯の種類も多様化しています。
盆提灯は置き型と吊り型に大きく分かれますが、形状・大きさともに、これまでの盆提灯とは一線を画す新しいデザインの盆提灯が登場しているのです。ここでは伝統的なデザインと現代的なデザイン、それぞれを簡単に紹介します。
伝統的なデザイン
伝統的なデザインの盆提灯といえば、障子紙を張った球形もしくは筒形の火袋(盆提灯の明かりが灯る部分)が真ん中にあり、その上下の口に加輪(がわ)と呼ばれる木材などの枠が取り付けられている提灯を想像するでしょう。
こうした盆提灯は種類によって絹や和紙、プラスチックなど様々な素材が使われており、物によっては繊細な模様が描かれていますが、基本的な構造はすべて同じです。なかには家紋などが入ったものもあります。
現代的(モダン)なデザイン
現代的なデザインの盆提灯には、ルームランプのような見た目の盆提灯など、お盆の時期に限らず、1年を通して使えるようなデザインのものが多いです。
伝統型の提灯に比べると、法事ならではの独特の雰囲気を想起させるものではなく、和モダンを基調にしたスマートなデザインが特徴です。灯りをつけたときに色の濃淡が大胆に表現されるものや、置き・吊りの両方に対応した個性的な形状のもの、スチールなどの素材感を活かしたものなど、現代の生活に違和感なく馴染むデザインに仕上がっています。また、部屋のインテリアに合うように豊富なバリエーションが取り揃えられています。
のしの書き方・付け方
盆提灯を贈るときには「のし」を掛けますが、表書きは故人が亡くなってから四十九日を過ぎているかどうかで異なります。
四十九日までは「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」が正しいです。一般的に初盆の際は四十九日を終えているため、「御霊前」を使うことはあまりありません。浄土真宗だけは、亡くなったその日から「御仏前」を使います。もしどちらかが判らないという場合は「御供」「初盆」を使っても良いでしょう。
のし紙の付け方も、状況にあわせて変える必要があります。一般的な包装の上にのし紙を掛ける「外のし」には、大勢の人が集まるところで贈り主が判別しやすいという利点があります。それに対して、慎み深さを表現したい場合は、包装を開けてからのし紙が出てくる「内のし」という方法もあります。
地域差によって受け取られ方に多少の差がありますので、必要に応じて選択すると良いでしょう。
盆提灯の贈る際は相手を思いやることを忘れずに
盆提灯を贈るときには提灯の選び方や、贈り方の作法がとても大切です。
適切なのしを掛け、贈り先の家族に無用な気遣いをさせないで済む盆提灯の種類やデザインを選ぶことができれば良いでしょう。故人の家族の置かれている状況やお住いのことを想像しながら、ふさわしい盆提灯を贈ってあげてください。