ふと気が付いた仏壇のホコリ。そういえば仏壇の掃除ってどうしたらいいのだろう。勝手に掃除をして、壊れたら困る…。仏壇に手を合わせる気持ちがある方でも意外に知らない仏壇仏具のお手入れ方法。いつ、どんなタイミングでどのようにお手入れをしたら良いかを解説します。
日常のお掃除方法・注意点
まずは、日頃のお掃除方法と手入れの注意点から確認しましょう。
日常のお掃除方法
お掃除を始めるときは、ご本尊とご先祖さまに仏壇の掃除をする旨をお伝えしましょう。仏壇に線香を立て、りんを鳴らして合掌します。
ご挨拶が済んだら、仏壇の内側の掃除からはじめましょう。はたきで内部のホコリを払います。香炉や火立などの仏具を置いている場所が汚れていたら乾いたやわらかい布で優しく拭き掃除をします。その後、外側の掃除に取り掛かります。仏壇の扉を閉じて外側のホコリを払い、汚れの気になる箇所は布で丁寧に乾拭きします。最後に、仏具を柔らかい布で拭きましょう。
すべて完了したら、あらためて線香を立ててりんを鳴らし、手をあわせて掃除が終わったことを報告しましょう。
お手入れの注意点
仏壇は細かな飾りのあるデリケートなものです。お手入れの際は以下の点にご注意ください。
1つ目は、ホコリを払うときにやわらかい毛で作られた「毛払い」ではたくこと。そうすれば、仏壇を傷つけることなくホコリを払えます。仏像と位牌については細かな作りを掃除するためにも専用のお掃除筆の使用をおすすめします。
2つ目は、金属の掃除は「乾拭きが基本」です。乾拭きで汚れが取れない場合はぬるま湯で汚れを洗い流してからしっかりと乾燥させてください。(真鍮製など、塗装がされていないものは錆びたり変色するおそれがあるため特に注意してください。)
3つ目は、木製品の掃除も「乾拭きが基本」です。線香やローソクのヤニがついている場合は布をお湯につけて固く絞り、汚れの気になる部分のみ拭く分には問題ありません。ただし、木の表面に小傷がある場合は、中に水が浸透して木材が割れる原因となることもありますので、注意してください。
最後は、金箔には極力さわらないことです。金が剥がれる可能性があるため、注意してください。また手の油分で金箔が変色する可能性もあります。
法要の前など、しっかり掃除をしたい場合のお手入れ
お盆お彼岸、法事前、新年の前など、仏壇をしっかり掃除したいときにはお手入れのポイントがあります。
まず、掃除のときは仏壇内の仏具を外に出すことになりますが、配置等がわからなくなるのを防ぐために、写真などを撮っておくことをおすすめします。仏壇内部の段(須弥壇)などは、取りはずせる仏壇もあるため、その場合は取りはずして掃除するのもよいでしょう。
仏具の掃除方法
続いて、仏具の種類や素材ごとに、掃除方法を個別に解説していきます。
本尊(仏像)
本尊(仏像)は繊細な構造になっているものが多いため、専用の筆でやさしく払いましょう。
掛軸
掛け軸はホコリを毛払いで払う程度に留めておいてください。基本的にはさわらないようにしましょう。
位牌
位牌の台座にたまっているホコリが気になる場合は、綿棒などでやさしくふき取ってください。金箔が使われている部分はさわらないようにしましょう。
金属(真鍮など)
おりんや仏具で金属の色が変色している場合は金属磨きでこすってください。クリームや液状など、形状のタイプは色々あります。ただし、金メッキ加工、フッ素コーティング、着色されているものは、表面塗装がはがれてしまうため使わないようにしましょう。
木製品
表面の艶がなくなっている場合は、木製品専用のつや出しクリーナーなどを使ってやさしく汚れを拭き取ってください。汚れがとれて艶を取り戻すことができます。
金襴(りん布団や打敷など)
金襴は基本的に洗うことができないので買い替えを検討してください。
伝統型仏壇(金仏壇・唐木仏壇)特徴と注意点
伝統型仏壇には、主に、金仏壇と唐木仏壇があります。
金仏壇とは、白木に漆を塗って、金箔や金粉をほどこした仏壇のこと。「塗仏壇」とも言われます。浄土真宗や浄土宗で推奨されることが多い仏壇です。一方、唐木仏壇とは、唐木(シタン、コクタン、タガヤサンなど)が使用された仏壇のこと。無垢材芯材を練りあわせたものや、杢張り、木目印刷、などタイプはさまざまで、重厚な風合いが特徴です。宗派による違いはありません。
お手入れの際には、まず「塗り(漆)」に気をつけましょう。水拭きをしないように注意し、乾拭きでとれないくすみはつや出しを利用するように。また「金箔」にも留意してください。こすると金箔が剥げたり、指先の汗や脂で酸化したりする可能性があります。
仏壇のお手入れはプロに頼むという方法も
仏壇のお手入れには、プロにまかせる「仏壇修復(洗い)」という方法もあります。国宝や重要文化財の修復と同じように、古くなっても洗い・修復を行うことで、あらゆる部分が新品同様に生まれ変わります。
洗い・修復は工程や技法の差によって、修理費用が異なるため、担当者がお宅までお伺いし現物を確認することになります。御本尊の閉眼法要(遷仏)や開眼法要(入仏)なども、ご寺院と連携して執りおこなうことが可能です。
ポイントを押さえるだけで毎日のお手入れが簡単に
これまで解説してきたように、仏壇のお手入れにはいくつかのポイントがあります。
掃除の手順
ご本尊とご先祖さまに挨拶をしてから、仏壇内部・外部・仏具の順に掃除、すべて終わったらあらためて完了の報告をします。(しっかりとお手入れをする場合は仏具を外して仏壇の掃除を終えたら最後に仏具を戻します。)
お手入れのポイント
お手入れの際は、毛払いではたくこと、乾拭きが基本、金箔に極力さわらない、の3点に注意しましょう。しっかり掃除をするときには前もって写真を撮って配置を確認。木製品の水拭きが必要なときは細心の注意を払ってください。
ポイントを押さえたら、案外簡単な仏壇のお手入れ。ホコリがたまってしまうと、なかなか汚れが取れないこともあるので、負担のない範囲で日常的にお手入れをしましょう。仏壇がきれいになることで気持ちもスッキリし、新たな気持ちで手をあわせることができます。仏壇がより身近に感じられるはずです。