数珠は「珠数」とも書き「念珠」とも呼ばれる最も身近な仏具のひとつです。
みなさんも一度は手にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、そもそも何故必要なのか、どうやって持つのが正解なのかについて知っている方は案外少ないかもしれません。
この記事では、そんな「存在は知っているけど、実はよく知らない」数珠について紹介をします。
数珠の起源と役割
まずは、珠数の起源や名前の由来、役割を知りましょう。
数珠の起源
数珠の起源は諸説あり定かではありませんが、古代インドのバラモン教で使用されていたものをお釈迦さまが仏教に取り入れたという説が有力です。その後、シルクロードをたどり飛鳥時代に仏教とともに日本にもたらされました。
現在では宗派ごとに形状が異なるものも含め、主な種類だけでもおよそ70種類あるとされ、その約9割がご本山の多い京都で作られています。
数珠の名称(念珠または珠数との違い)
「じゅず」をパソコンで入力すると、多くの場合「数珠」とはじめに変換されます。これは昭和に入り常用漢字の付表に「数珠」と表記されたためです。それ以前は「数珠」と「珠数」は混在しており、呼び方も「じゅず」「ずず」「じゅじゅ」などいくつかのパターンが存在したといわれています。現在でも、老舗数珠店のなかでは、店名が「珠数」となっているところもあります。
もともと「数珠」という名前は、念仏や真言を唱える時に数を数える役割があったことに由来しています。その他にも、仏さまを念ずるために用いる仏具として「念珠(ねんじゅ)」と呼ぶこともあります。
珠数の役割
合掌する際に数珠は必需品とされています。それは何故なのでしょうか。
その名前の由来となった「数を数える」使いみち以外にも、珠数を手に持つことによって「仏前に合掌するときの正装」という役割がかなうと考えられるからです。
珠数を持ち、丁寧なかたちで仏さまやご先祖さまに向き合うことは仏教徒として、また供養するだれにとっても大切なことだといえるでしょう。このことから珠数は必需品とされているのです。加えて、災いから身を護るものだから用意をしたほうがよいともいわれています。
珠数のパーツ それぞれの名称と意味
数珠は大きく分けて、略式タイプと各宗派の正式なタイプがあります。
正式なものの多くはメインとなる珠(主珠)が108個でつくられています。この108という数字は「人間の煩悩の数」などと一般的に言われていますが、それ以外の珠にも、実はひとつひとつ意味があるのです。
数珠のかたちには仏教の世界観が反映されています。ここでは、広く伝えられている各部の意味を紹介します。宗派によって解釈が異なることもありますので、より深く学びたい方はお寺さまに尋ねてみてもよいでしょう。
主珠(おもだま)
菩薩の発心より成仏に至るまでの修行の位を表します。その修行を経て108の煩悩を経つとされています。
親珠(おやだま)
無量寿の仏果を象徴し、阿弥陀如来あるいは釈迦如来を表しています。
四天
四菩薩(してん・しぼさつ)四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天)あるいは、(観世音菩薩、弥勒菩薩、普賢菩薩、文殊菩薩)を象徴しています。
弟子珠(でしだま)
十派羅蜜、あるいは十大弟子を象徴しています。
中通し紐(なかどおしひも)
中糸は菩薩の修行者を象徴しています。
数珠の正しい持ち方
ここでは、数珠の正しい持ち方を紹介します。
天台宗
1 数珠を人差し指と中指の間に掛けます
2 そのまま手を合わせて合掌
真言宗
1 数珠を両手の中指の間に掛けます
2 そのまま手を合わせて合掌
浄土宗
合掌する置きには数珠を両手の親指と人差し指の間に挟み、房を手の間に垂らします
浄土真宗本願寺派(西)
合掌をする時には数珠を両手の親指と人差し指に挟み、房を小指側に垂らします
真宗大谷派(東)
合掌をする時には数珠を両手の親指と人差し指に挟み、房を親指の左手側に垂らします
禅宗(曹洞宗・臨済宗)
合掌をする時には数珠を左手の親指と人差し指の間に挟みます
曹洞宗の数珠には珠の間に銀輪が入り、臨済宗の数珠では銀輪は入っていません
日蓮宗
・日蓮宗
1 題目を唱えるときや回向では、三房の方を左手側にして、輪をひとひねりして中指に掛けます
2 房を外側に垂らしたまま数珠輪を包み込み合掌
珠数の意味を知ると、祈りはもっと深くなる。
珠数は仏教とともに日本にもたらされた1400年以上の歴史がある仏具です。その長い歴史のなかで、さまざまな形が生まれ、その意味を変化させてきました。
祈るという行為はすべて尊く、持ち物によってその価値をはかることはできません。けれども、数珠を知ることでこれまで以上に「手を合わせる」ことの大切さや、その行為の奥深さを感じることができるでしょう。