過去帳とは、亡くなった方の「戒名(または法名)」「命日(亡くなった日)」「俗名(生前の名前)「亡くなった年齢」などを残しておくための記録帳です。そして、先祖供養をするうえで大切な仏具のひとつでもあります。
この記事では、過去帳の選び方や記入方法、位牌との違いなどを紹介します。
過去帳の選び方
サイズについて
過去帳をはじめて購入するときは「サイズ」と「種類」を確認しましょう。
過去帳にはさまざまなサイズがあります。
基本的にはお仏壇のサイズに合わせて用意するとよいでしょう。ただし、小さいサイズ(3.0寸 縦寸約9cm)以下の場合、戒名の文字数が多いと書きにくいこともありますので購入の際、注意が必要です。
・上置仏壇では3.5寸(縦寸約10.5cm)~4.0寸(縦寸約12cm)
・台付仏壇では4.0寸(縦寸約10.5cm)~4.5寸(縦寸約13.5cm)
上記のサイズを目安に選ぶとよいでしょう。
種類について
過去帳には本紙に日付があるタイプとないタイプの2種類があります。
日付あり
現在、販売されている多くがこのタイプです。
1日から31日までそれぞれ見開きごとに日付が書かれていて、年月には関係なくご先祖さまの命日に合わせ記入します。お仏壇の前で毎日1ページずつめくり、先祖供養をすることができます。
日付なし
先に亡くなった方から順番に記入していくタイプです。
家系譜のような役割としても使えます。日付ありの場合、同じ月命日の方が重なると書ききれなくなることがありますので、その点を考慮し購入される方もいます。ただし、取扱店が少なく、購入が可能な場合でも納期がかかることが多いので注意が必要です。
過去帳の書き方
過去帳は、誰が、どのように書くのがよいのでしょうか。
過去帳は誰が書くのか
お世話になっている菩提寺がある場合は、菩提寺に依頼をして書いていただくことが多いです。なぜなら、お寺では寺院用の大きな過去帳で檀家の記録をまとめて管理していることが多いため、お寺と家庭の記載内容を揃えることができるからです。
しかし、決まりごとではないので、ご自身や代筆業者が書いても問題はありません。書ける方が見つからないときは仏壇店に相談してもよいでしょう。なお、お寺さまに依頼をする際はお布施が必要になります。
表紙の書き方
従来の過去帳には表紙に表題を書く場所があります。
きっちりとしたルールがあるわけではありませんが、一般的には「◯◯家先祖代々之霊」と家名を記します。ただし、浄土真宗の場合は、人は亡くなると仏となり霊魂が宿るとは考えませんので「〇〇家先祖代々」と書きます。
過去帳のサイズが小さい場合やモダンタイプでは、シンプルに「〇〇家」とだけ書いてもよいでしょう。木製などで表題がないタイプは家名をいれる必要はありません。
本紙の書き方
「戒名(または法名)」「命日(亡くなった日)」「俗名(生前の名前)」「亡くなった年齢」を記します。
日付あり
故人の月命日にあたるページに書いていきます。命日は年月日すべて、もしくは年月までのどちらでも問題ありません。
日付なし
亡くなられた順番に書いていきます。いづれも1名につき、1~3行ほど使用します。
過去帳を書くときの注意点
過去帳は本来、硯で墨をすり筆で書きます。本紙は「鳥の子」と呼ばれる和紙でつくられており、慣れていないと文字が滲むことがあります。最近では、滲みにくい紙でつくられたものもありますので、心配な場合は事前に確認してもよいでしょう。また、ご自身で書くのであれば筆ペンなど書きやすいものを使用しても構いません。
過去帳は基本的に書き直しはできません。
ですから、あらかじめ鉛筆などで下書きをしておくとよいでしょう。
もしも書き損じてしまったら
慎重に書いても書き損じてしまうことはあります。
その場合は、新たに買いなおすか、画材店や和文具店で似た和紙を購入して書き損じた箇所に貼ります。新品同様というわけにはいきませんが、丁寧に対処をすればご先祖さまに対して失礼になることはありませんのでご安心ください。
過去帳はどこに置いたらいい?
過去帳はお仏壇に飾ることをおすすめします。
そのために「見台(けんだい)」または「過去帳台」と呼ばれる仏具を用意します。過去帳を見台に乗せ、お仏壇のなかの2段目もしくは3段目に置きます。ご本尊が隠れない場所に置きましょう。
本来過去帳は、日めくりで月命日を迎えるご先祖さまを供養するためのものです。ご先祖さまの月命日にあたらない日は閉じておくと、本紙の日焼けを防ぐことができます。
また、最近では見台(過去帳台)を用意せずに普段は引き出しにしまっておく方もいます。
過去帳とお位牌の違い
お位牌と過去帳の違いについて尋ねられることがありますが、決定的な違いは「お魂を入れることができるかどうか」です。
どちらもご先祖さまを記した大切なものですが、過去帳は「記録帳」として、代々のご先祖さまを記します。一方で、お位牌は開眼法要をすることで「故人の霊魂が存在する場所」になります。さらに、1人ひとりの故人に用意する必要があります。
この2つは併用することもあります。特に、お位牌がたくさんある家庭の場合は、お位牌をまとめるときに過去帳が必要になります。
浄土真宗では通常位牌を用いることはありませんので、お位牌のかわりとして用意される方が多いです。
過去帳は自分とご先祖さまを繋げる掛け橋
たくさんのご先祖さまの生きた証を見ることができる過去帳。
それは、お仏壇やお位牌と同様に、先祖供養の要となる大切な仏具のひとつでもあります。選び方に難しいルールはありません。記入するときは、間違えないように少しの注意が必要ですが、丁寧に気持ちを込めて記すことに心を向けましょう。
そして、お仏壇に手を合わせるときは、過去帳にも目を配ってみてください。そうすることで、ご先祖さまから脈々と繋がる歴史のなかに今の自分が在るという不思議さと、そのなかで生きる有難みを実感することができるかもしれません。