お位牌は亡くなった方の霊魂の拠り代(よりしろ)であり礼拝の対象です。しかし、価値観の多様化や生活スタイルの変化とともに「無宗派だからお位牌を用意しない」「お寺さまとのお付き合いは考えていないから戒名を授からない」という方が増えてきました。その一方で、無宗派でも大切な故人のお位牌を作って供養をしたいという話も伺います。
今回は戒名がない方でも安心してお位牌をつくる方法をご紹介します。
戒名がないと位牌は作れないの?
戒名がない方でもお位牌をつくることは可能です。
そもそも戒名とは、仏教徒としての道徳をまもって生活する者に与えられる名前です。そのため、本来は生きている間に「生前戒名」を授かるのが理想です。生前戒名を持たない方が死後、戒名を授けられることが多いのは、仏の世界に行くときに“仏教徒として道徳を守って生活をした”証しが必要だと考えられているためです。
戒名がない場合、お位牌は俗名(生前のお名前)だけでつくることができます。
お位牌の購入方法と選び方
一般的なお位牌と同様、お近くの仏壇店やネットショップで購入することができます。
最近では多くの種類があるので迷ってしまうかもしれませんが、気に入った形を自由に選んで問題ありません。伝統的なタイプの他にも、シンプルでおしゃれなデザイン、人工大理石・アクリルといった新しい素材を取りいれたお位牌もありますので、お部屋のインテリアや故人のイメージに合う、丁度よいひとつが見つかるでしょう。
サイズは、3.5寸(札丈10.5cm)~4.5寸(札丈13.5cm)が一般的ですが、置く場所が決まっている場合は、その場所に応じた大きさを選んでください。最近では、ワンサイズ展開でどこにでも安置することができるタイプもあります。
文字入れの製作には通常10日~2週間かかりますので早めに購入することをおすすめします。
文字の入れ方とレイアウトについて
ここでは標準的な文字の入れ方とレイアウトを紹介します。無宗派の場合、きっちりしたルールはありません。
ただし、お位牌のデザインによっては、その形ならではのレイアウトを採用していることもありますので注意が必要です。レイアウトについて特別な要望がある場合は、注文の際に販売店に相談します。
戒名がないお位牌に記す内容
お位牌に記す内容は「俗名(生前の名前)」「命日(亡くなった日)」「亡くなった年齢」の3つです。
無宗派ですので宗派の本尊を表す「梵字」は必要ありません。そして、その方が故人であることを表すために俗名の下は「○○○之霊位」と表記します。それ以外にも「○○○之霊」や「○○○位」と記することもありますが、どれも意味合いは同じですのでお位牌のサイズと文字数のバランスを考えて自由に選ぶとよいでしょう。
俗名でつくる位牌では、亡くなられた年齢を「満年齢」で記すことが多いですが、その他に生まれた年を一歳とする「数え年」を使用することもあります。また、年齢の前に「享年」「行年」とつけることが多く、つける場合はどちらを選んでも問題ありません。葬儀社が用意した白木の位牌があれば参考にするのもひとつの方法です。
基本的なレイアウトは2種類
主なレイアウトは2パターンあります。
1つ目は表面に俗名のみ。裏面に命日と亡くなられた年齢を記す
2つ目は表面に俗名と命日。裏面に年齢を記す
他にはこんな方法も
例えば、表面に故人の好きだった言葉や、故人に送りたい言葉を入れることもできます。仏教的なお位牌では用いることのないこのような方法は、俗名のお位牌ならではといえます。
魂入れは必要?
お魂入れ(開眼法要・お性根入れ)という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。お魂入れとは、その名の通りお仏壇やご本尊、お位牌に魂をいれるための法要です。仏教ではこの法要を行うことでお位牌が魂の依り代(よりしろ)になると考えられています。
ただし、特定の宗派に属していない、またはお寺さんと付き合いがない場合、法要は必ずしも必要ではありません。はじめて自宅にお位牌を迎えたときに、きちんと手を合わせて故人への感謝を表すことでご自身の祈りの対象となると考えられています。
お位牌の置き方
通常、お位牌の位置はご本尊様より一段下とされています。しかし、無宗派の場合はご本尊は用意しませんので、お仏壇最上段の中央にお位牌を飾ってください。写真立てや遺品を一緒に飾る場合はお位牌を中央、写真立てなどをその脇に置くと調和します。
大切なのは供養したいという気持ち
大切な人を供養したいという気持ちに宗派や戒名の有無は関係なく、だれでもお位牌をつくることができます。故人のイメージやお部屋のインテリアにぴったりなものを用意しましょう。大切なことは、故人に哀悼の意を表し冥福を祈る気持ちです。俗名でつくるお位牌はそんな新しい供養の希望を叶えるひとつの方法なのです。