お通夜やお葬式の参列、親戚の法事など、大人になると数珠を必要とする場面は自然と多くなってくるものです。「今まであり合わせのものを使っていたけど、ちゃんと自分のものを用意したい」または「子どもにそろそろ持たせてあげたい」そう考えている方もおられるのではないでしょうか。
数珠は良い物を選べば、修理をしながら一生使え、次の代にも残すことができます。選ぶうえでの基本を押さえて気に入ったひとつを見つけましょう。
そもそも数珠とは(珠数 ・念珠)
数珠は「珠数」とも書き、他にも「念珠」とも呼ばれます。
仏さまやご先祖さまに手を合わせるときの必需品であり、お守りのように持ち歩くこともできます。数珠の起源は諸説ありますが、古代インドのバラモン教で真言を唱えるときに使用されていたものを、お釈迦さまが仏教に取り入れたという説が有力です。その後、シルクロードをたどり日本にもたらされました。
数珠を購入するのに適したタイミングとは?
何もないときに数珠を購入するのは縁起が悪いのではないかと気にする方もいますが、
結論から言うと「用意しようと思ったとき」が購入する最も良いタイミングです。
お葬式など弔事に使用することが多いため、それ以外の時期に購入するのをためらう方も少なくありません。しかし、数珠はもともと結婚などの慶事でも用意するものです。結婚のほか、進学、就職などの人生の節目も数珠を購入する良い機会と言えます。
数珠の選び方 3つのポイントを確認
それでは実際に購入する際の手順を確認しましょう。
ポイントは「種類(かたち)」「大きさ」「材質」の3つです。
1 数珠の種類(かたち)
まずは数珠の種類(かたち)から決めるとよいです。
数珠は大きく分類して、各宗派共通で使用できる「略式数珠(片手数珠)」と宗派ごとに決まりのある「宗派ごとの正式な数珠」に分けられます。そして、それぞれ男女に適した大きさで作られています。
正式な数珠を用意する場合は、ご自身の宗派を事前に確認しておきましょう。
略式数珠(片手数珠)
現在、使用している方が最も多いのがこのタイプです。
珠や房のバリエーションが豊富でさまざまなデザインで作られています。基本的に、房の形状や珠の材質は好みで選ぶことができます。
また、 「子供用数珠」 といったものもあり、小学校低学年くらいまでの小さな子どもに適しています。
宗派ごとの正式な数珠
各宗派の正式な形で作られた数珠です。
珠数が108個で作られていることが多く、人間の108の煩悩を滅するためなどといわれています。どの宗派でも用意されていますが、特に日蓮宗と浄土宗では宗派の正式な数珠を持つ方が多いです。また、ご自身の宗派とは違う宗派のお葬式であっても問題なく使用することができます。
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2 数珠の大きさ(男性用・女性用)
種類(かたち)が決まれば、次に数珠の大きさを決めましょう。
本来は老若男女で念珠の大きさを分けることはしません。しかし、現代では大きい珠の数珠を男性用「男持」小さい珠の数珠を女性用「女持」と区別して使用するのが慣習となっています。
宗派ごとの正式な数珠は、珠の大きさではなく 「8寸」「尺〇」「尺2」といった輪の大きさで分けられます。この場合は性別によって区別はされませんので、ご自身に合ったものを選んでも良いでしょう。ただし、手を通したときに窮屈なものや、大きすぎるものはおすすめしません。一般的には「8寸」は女性用、 「尺〇」 以上は男性用として持られることが多いです。
3 数珠の材質
最後に材質を決めましょう。
いろいろな材質のなかから、自分に合うひとつを選ぶことは数珠を購入するにあたっての醍醐味といえます。天然石や木の実などの天然素材の他、プラスチックなどで作られたものもあり、価格は材質によって大きく異なります。
必ずしも価格によって製品の耐久性が決まるわけではありません。また、高価なものほど信仰心が厚いということでもありません。しかし、修理をしながら長く愛用することを考えると、やはり天然素材のものがおすすめです。
実際に手にとることができるのであれば、持ったときの感触や肌馴染みなども含めてあなたが「これだ」と思うものを見つけましょう。
天然素材は大きく分けると下記の3種類があります。
天然石
経年変化が起こりにくく、購入当時の状態を保ちたい方におすすめです。
美しい色合いで、手に持つとひんやりと冷たいものが多いのが特徴です。代表的な材質は水晶やヒスイ、メノウなど。色や質感、また石言葉を参考に選ぶとよいでしょう。
天然木(木の実)
手に持つほど艶が増し、材質によっては時間の経過とともに表面が飴色に変化していきます。
そのため、愛着を感じやすいという特徴があります。また、自然に還る素材という観点から選ぶ方も。日蓮宗や真言宗、天台宗などで読経の際に数珠を擦るのであれば、天然石よりも天然木(木の実)のほうが傷つきにくく扱いやすいです。黒檀や紫檀、菩提樹などが代表的な材質です。
その他 (珊瑚・真珠・琥珀など)
これらの素材には宝飾的な価値があります。
特に珊瑚は現在ではあまり採ることができないため、希少価値が年々高まっています。いずれも汗などで表面が劣化することもあるデリケートな材質ですので、使用後は乾拭きをして保管するとよいでしょう。
注意点 房の色は地域ごとのルールがある場合も
ご自身の宗派を間違えなければ、数珠えらびに難しいルールはありません。
ただし、房色には少し注意が必要です。基本的に房の色は自由に選ぶことができます。しかし、地域によって色に決まりがある場合も。例えば、東海地方や北陸地方の一部では葬儀の際、女性が使用する念珠の房色は白がよいとされています。
心配な場合は、親戚など身近な人に確認しておけば安心です。
数珠と一緒に数珠袋の購入も忘れずに
数珠を購入する際、合わせて用意したいものが数珠袋です。
つい鞄や洋服のポケットに入れてしまいがちですが、数珠袋に入れることで珠に傷がつくことを防ぎ、房をよれにくくします。そして、法事や葬儀の場では、数珠袋から数珠を取り出すほうが丁寧な印象になります。大きめの数珠を入れる場合は、きちんと納めることができるかサイズを確認することもポイントです。
気に入ったひとつを長く大切に使用しましょう
数珠は、一人にひとつ持つことができる最も身近な仏具です。購入時期に決まりはなく、略式数珠か宗派の正式な数珠のどちらにするかを決めた後は、基本的に自由に選ぶことができます。
良いものを持てば生涯にわたって使い続けることができ、次の代に譲ることで「一生もの」以上の価値あるひとつになるでしょう。種類や材質で悩んでしまうかもしれませんが、ゆっくりと時間をかけて愛着がもてるものを見つけてください。
そして購入した数珠は法事や葬式だけでなく、ぜひお仏壇の前でも使用してみてください。普段とはすこし違う、快い気持ちで仏さまやご先祖さまに手を合わせることができるかもしれません。
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